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背中のチャックを開けたら、たぶん猫が入ってた犬と暮らした10年間

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にぎやかなマレーシアの旧正月の三が日が明けました。
世間のお祝いムードとは対象的に、わが家では昨日の朝、プチバセットのトリコが静かに旅立ちました。
あと13日で16歳でした。

思いがけずごまたろう(夫)と一緒に暮らすことになった2006年の夏は、トリコとの暮らしをスタートさせた夏でもありました。
トリコは、ごまたろうの連れ子だったのです。

生後7ヶ月のとき、ペットブリーダーではなく、北フランスのハンターのところからやってきたトリコ。
トリコのお母さんは、ウサギ狩り用のリアル狩猟犬だったそう。
その血のせいか、ひとりで親きょうだいの元を離れてはるばる日本にやってきたせいか、犬のくせに人にまったく媚びるところがなくて、野生的で。
散歩先で猫を見つけると、ピンと立てた尻尾を小刻みに降って、獲物がそこにいることを教えてくれるような子でした。

なでようとして手を伸ばすと、すっとかわす。
抱っこしようとすると、ぱっと逃げる。

「犬っていうよりまるで猫みたい。背中にチャックがついていて、それを開けるとたぶん猫が入ってるんだよ」ってよく笑ったっけ。

フランスからやって来たトリコロール(三色)の毛の犬だからトリコ、という名前のこの子と、どうやったらなかよくなれるだろう。
当時、赤ちゃんへのスキンシップの効果について記事を書くため、某大学の先生の元へ時々取材に通っていた私、早速トリコで実験してみることにしました。

先生曰く、母性とは本能として母親に備わったものではなく、皮膚感覚(スキンシップ)を通して育まれるものである、とのこと。
お母さんが赤ちゃんに触れることで(赤ちゃんはお母さんにたくさん触れてもらえるよう、まんまるで愛らしいかたちをしているのだとか!)、お互いに愛着が芽生えていき、そしてそれがのちにその子の人格形成や人間関係にとても大きな影響を及ぼすのだそう。

当時はまだ子どもがいなかったので、人間では試せない。
でも、人に懐かない犬が目の前にいる。
ひょっとしたら、スキンシップによって犬とも距離を縮めることができるのではないか? と思ったのです。

そこで、最初はムリやりトリコを捕まえては、スキンシップ。
背中の皮を両手で掴んで前後に動かしてマッサージしたり、なでたりさすったり、とにかくスキンシップ。

すると……あんなに気難しかった犬が、気持ちよさそうに身を委ねるようになり……次第に甘えたり、信頼を寄せてくれるように。
そして、同時に私の中にもトリコを愛しいと思う気持ちがどんどん芽生えて……。

私が妊娠して臨月を迎えたときは、留守番の私を心配して、大好きな散歩に行くことも渋ったくらいですから!
長男たろうが生まれてからは、子育てと仕事と家事でいっぱいいっぱいで、犬たちをかまってやる時間が減ってしまったけれど……。

一昨日の晩、久しぶりにトリコをマッサージしました。
体重はその昔、12kgあったのに、たぶんもうもう6〜7kgといったところ。
ウエストは両手もつと指が余るくらい細くなってしまって、そーっとそーっとという感じでしたが……。

ラベンダーのエッセンシャルオイルをつけて首まわりをマッサージしたら、気持ちよさそうに目を閉じていました。
午前3時過ぎまで、立ちたがったら立たせてやって、歩きたがったら歩くのを補助してやって……声がか細く、体温もだいぶ下がっていて、もう長くないことは明らかでした。
消えかかっている命を惜しみながら、10年間のありがとうとお別れをしたのでした。

そして翌朝。
丸一日以上ごはんが食べられなかったのに、ごまたろうの手から大好きなチーズを少し食べ、水を飲んだあと、トリコは満足したのか眠りについたそう。
それを見届けたごまたろうは安心してコーヒーを淹れにいき、戻ってきたらそのまま逝ってしまっていたそうです。

少しも苦しまず、静かな穏やかな旅立ちでした。
最期の最期を看取ってやることはできなかったけれど、介護していたごまたろうも、前夜たっぷりお別れをした私も、納得の別れでした。
なんだか最期までトリコらしいなあ……。

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世田谷に住んでた頃、足繁く通っていた近所のカフェという名の飲み屋。
ここで会った犬仲間たちは、今でもとても大切な友人です。
前述のとおり、トリコは抱っこが嫌い。

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一緒に暮らした最初の冬。
この頃はもうすでにだいぶなかよしに。
しかし、抱っこは大嫌いなんだってば(笑)。

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ウサギ狩りの犬なのに、ウサギのコスプレをさせられて迷惑そうなトリコ。
基本、笑わない系。

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私より1年早くママになりました。
トリコの母性はとても強く、何があっても仔犬たちを守ろうとする姿は、凛としてものすごくかっこよかったです。

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みんなが若くて命に溢れ、輝いていたころ。
こんな宝石みたいな時間は、あっという間に駆け抜けてしまった……。
犬の一生って短いな……。
あとでふり返れば、きっと人もそうなのでしょう。

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狩猟犬らしく、鼻のよく利くワイルドな子でした。
川でも海でもヤブでも、おかまいなしにどんどん入っていく!!
海とか山とか温泉とか、息子たちが生まれる前は、よく一緒に遊びに出かけたっけ。

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対して、草食系のダンナ(マルコ、2015年8月に他界。「さよなら、マルコ」参照)は、岸でじっと見守る係(笑)。

ところで、トリコには唯一理解しがたい嗜好が……。

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それは、ごまたろうの頭をなめるのが、大好きだったこと。
塩味!?
脂味!?

いやーーーーっ、想像したくなーーーーい((((;゚Д゚))))
娘のペコもしっかり受け継いで、母のマネっこ(´Д`)

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トリ、トリ、たくさんの楽しい時間をありがとね。
私にとっては初めてのひとつ屋根の下で一緒に暮らした犬。
10年間、東京でも徳島でもマレーシアでも一緒でした。
10年って、うちの息子たちより長い付き合いなんだな……。

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きっともうマルコに会えたね。
マルコはトリのこと、大好きだったから、すごく喜んでると思う。
キミたちの子どもたちがそっちに行くのにはまだ少し時間があるから、ふたりの時間を楽しんでね!

永遠に失われてしまった時間を思って、ただただ幸せだったなあ……と。
そして、私たちはなんて不確かな時間を生きているんだろう……。
犬2頭を見送り、父も逝き、失うことを知らなかった10年前より、随分と年を取ってしまった気分だ(苦笑)。

犬も人も年とともにだんだん弱っていく。
体力も未来への希望も。
それを補うのが、新しい命なんだろう、だから私たちは繁殖するのだろうと、わが家の子どもたち(人間と犬たち)を見て思ったりも。

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ごまたろうが撮影した晩年のトリコ。
目が見えなくて、耳もよく聞こえなくなっちゃったけど、私たち家族にとって、ホントに特別な、自由気ままで気高くて、野生的で、そしてとてもとても美しい犬でした。

日本で、マレーシアで、トリコを覚えていてくれる人がたくさんいることに心から感激しています。
生前、トリコをかわいがってくれたすべての人に、どうもありがとう。

……さあ、旧正月明けはちょっとしんみりスタートになってしまったけれど、新しい一年も元気よくいきますよ!