イギリスの伝統的なボーディングスクールシステムを取り入れたエプソムでは、昼間は授業を教えている先生たちが寮に住み込み、生徒たちと1つの大きな家族のようなコニュニティを形成して生活しています。
6つある寮の1つで、第1回目のインタビューに登場してくれた加藤ミナコさん(仮名)も所属するウィルソンハウスの責任者(ハウスミストレス)、イギリス出身のケイティ・ホプキン先生にお話をうかがいました。
ーーハウスミストレスのお仕事について教えてください。
「フルボーダー(寮生)、デイボーダー(通学生)に関わらず、ウィルソンハウスに所属する女子生徒たちの面倒をみることです。チューターなどハウスのスタッフと一丸となって、日常業務や生徒たちの個人指導を行っています。生徒たちがハウスを自分の家のように感じながら、安全で快適な生活が送れる環境づくりを何よりも優先しています」
ーー女の子たちが、日々楽しく生活できるように取り組んでいることは何ですか?
「例えば『ガーリーナイト』といって、女の子たちだけで楽しむ夜のイベントや、週ごとにいちばんキレイな部屋や、逆にいちばん汚い部屋を発表したり、ハウス独自のイベントを多く取り入れています。生徒たちにもとても好評なんですよ」
それぞれのハウスには予算があり、生徒たちがしたいことなどに使われるそうです。
「例えばこういったアクティビティがしたい、バースデーケーキが欲しい、ハウスのみんなと遠足に行きたいなど、どうしたら実現できるかみんなのアイデアを取り入れながら、計画を立て実行しています。
内容によっては、生徒の代表メンバーで構成されるカウンシルで話し合いがされるケースもあります。このように、私たちは生徒たちの声をとても大切にしています」
ーーとても楽しそうですね。女子学生寮でのチャレンジはどんなことですか?
「10代は大人の女性への成長過程であり、身体も大きく変化する時期ですから、さまざまなことが起こります。彼女たちの悩みに対応していくのは、大きなチャレンジですね」
ウィルソンハウスには、現在アシスタントとして小学部の先生が住み込んでいるそう。年下の女の子たちへの対応には彼女の経験が、そしてもう少し上の女の子たちへの対応にはケティ先生の経験が役に立つそう。
「日々のチャレンジはあるものの、エプソムはとてもいいバランスで生徒たちへのサポートができる環境が整っています」
ーー女の子同士のケンカなどは起きますか?
「そんなに頻度は高くありませんが、たくさんの人間が一緒に生活をしているので意見が食い違うことは当然あります。そういった時には言い合いやケンカをするのではなく、解決の方法を見つけていくように指導します。
しかし、時には誰かが孤立してしまうということも起こります。もしそのようなことが起きた時には、すぐにソーシャルイブニングなどのイベントを設け、誰もひとりで取り残されないようみんなで一緒になって楽しい時間を過ごす機会をつくっています」
ーー生徒が悩み事を抱えているときはどんな対応をしていますか?
「ここではスタッフが24時間対応で勤務しているので、いつでも話や相談ができる環境になっています。また、エプソムカレッジには毎週月曜から金曜まで経験豊富なスクールカウンセラーが常在しているので、そこで話をすることができます」
先生やスタッフが生徒たちと一緒に生活をしているので、生徒一人ひとりの長所から短所までよく把握することができるだけでなく、学業や生活態度、心の変化にもいち早く気がつけるため、それに合ったサポートができるそうです。
ーー今年度、ウィルソンハウスで日本人留学生で初めてミナコさんがリーダーになりました。入学してきた頃と比べて、ミナコさんの変化はどうですか?
「ミナコは本当に頑張った生徒のひとりです。エプソムに入ってきた時は、とてもシャイで静かな女の子でした。でもミナコはすべてのことにとても一生懸命取り組み、英語も上達したことで自信をつけました。さまざまな学校イベントに積極的に参加し、今ではウィルソンハウスすべての女子生徒のロールモデルです」
ケイティ先生は「ミナコは本当にすばらしい生徒」と、誇らしげに言ったあと、こう続けました。
「みんなの投票で、ミナコは2つのポジション(Head of WilsonとSports Cap)に選ばれました。Head of Wilsonのポジションは、スタッフと生徒両方から信頼され、そして尊敬される生徒が任されるリーダーのポジションです。
そしてスポーツキャプテンは、ハウス対抗イベントのリーダーです。ミナコはとてもスポーティーで、その能力が認められ、自分よりも年齢の上のチームにも所属しているほどなんですよ」
ーー最後に授業のことも教えてください。ケイティ先生の専門はアートだそうですが、授業で気をつけていることは何ですか?
「アートクラスではデッサン、絵画、テキスタイル、写真、印刷、陶芸など、さまざまななスキルを学びます。エプソムには英語が母国語ではない学生が多いので、説明をする時に言葉だけではなく、実際にお手本を示すなどの工夫をし、学生にわかりやすく内容を理解させることを心がけています」
インタビューが終わり、太陽が降り注ぐウィルソンハウスの玄関に出ると、ケイティ先生はアートの先生らしくにっこりこう付け加えました。
「ウィルソンハウスは、こんなふうにとてもカラフルなんです。この玄関のカラフルな模様も、生徒が自分たちでペイントしたんですよ」