前回ご紹介した日本人留学生、高田リョウさんによれば、エプソムは学業だけでなくスポーツにも力を入れていて、その内容はかなりハードとのこと。運動が苦手な子どもは大丈夫なのだろうか? と心配になってくるほどです。
そこでもうひとり、14歳の山田ユウタさん(仮名)に話を聞いてみました。日本の公立中学校では文芸部に所属する文学少年だったユウタさん。将来の夢はゲームクリエイター。一見、もの静かで控えめな印象のユウタさんのような生徒にとって、マッチョなエプソムでの学校生活はどのようなものなのでしょうか。
授業が本格的なことに驚いた
2015年、家族の仕事でマレーシアにきて、当初はクアラルンプール日本人学校に編入。その後、母親が日本人会から持って帰ってきたパンフレットがきっかけとなり、エプソムカレッジへの入学をすすめられました。
「もともとインターは外国の人が行くところで、自分には関係ないと思っていました。英語も全然わからないし、正直、行くのは嫌でしたね」
突然の提案に驚き、抵抗もしたものの、結局、両親の強い希望に押し切られてしまったというユウタさん。2015年9月から半ばイヤイヤ入学することになりました。ところが、入って5カ月たった今では心境が激変。「移ってきてよかった」と断言します。
「何もかもが日本と違います。まず授業が本格的なことに驚きました。教科書をまったく使わず、プロジェクターで授業を進めます。日本では先生が一方的に説明してしまいますが、こちらではすべて自分で調べて考えるのでおもしろいです。アート・デザイン・テクノロジーセンターでは、レーザーカッターや3Dプリンターなどの本格的な設備を授業で利用します。
でもいちばんいいのは、先生がとにかくほめてくれること。怒られることがあまりない。あと学校の食事がおいしいことですね」
ユウタさんは、入学時は英語力がほぼゼロの状態でしたが、5ヶ月経った今では大分わかるようになりました。
「英語は自分でも上達したと思います。わからない単語があれば、辞書で調べてます」と、淡々と話します。相当努力したという英語。その伸びが、ユウタさんの大きな自信となったようです。
苦手なスポーツもここでは楽しくやっていける
毎日2時間ある放課後のCCA(クラブ活動)では、サッカー、水泳、ヨガ、エコ活動、歌、母国語、ドラマなどをこなしています。CCAの内容は毎学期変わります。ユウタさんはブッククラブに希望を出していましたが、今学期は入れませんでした。学校側はCCAを通じて生徒たちに幅広い体験をさせることを目的としているのか、希望しないクラブを割り当てられることもあるそうです。
「スポーツはあまり得意ではないのですが、入ってみると疲れるけど楽しい。日本のしごきのようなものはないし、顧問の先生がついてみてくれるから、きついけど、やっていけるんです。いずれはITクラブに入ってみたいです 」
CCAのほかにも、動物保護団体の講演を聞いたり、寮のハウスでのアクティビティに参加したりと忙しい毎日。ハウスでの合唱行事はみんなで力を合わせて楽しかったとのこと。
週末はエプソムカレッジに入っている妹とともにクアラルンプールの自宅に帰ります。エプソムに入ってから、性格が変わったというユウタさん。
「英語上達のためにも友だちとしゃべりたいと思い、人と積極的に関わるようになりました。性格が明るくなりましたね。寮生活で今までは母親まかせだった部屋の片付けなども自分でするようになりました」
そうは言っても日本の学校と比べて悪いところもあるのでは? と突っ込んで聞いてみると、しばらく考えてから「悪いところは……ないと思います。家庭科の授業がないことくらいかな」というユウタさん。最後にこう話してくれました。
「ここでは、みんなで楽しむところなんですよ。そのせいか、僕も何でも受け入れて楽しめるようになりました。何より外国の友だちと接することで、視野が広がった。来るまではイヤだったけど、今はいいじゃん、って感じですね。もし家族が日本に帰国しても、僕はエプソムに留まりたいです。悩んでいる人がいたら、思い切って入ってみたら変わるよ、と言いたいですね」