ジョホールでは、いわゆる、コース料理で西洋料理を楽しむファインダイニングレストランがまだほとんどありません。
いえ、正確に言うと、これまでいくつものファインダイニングがオープンしては、数年で消えていきました。
情熱とこだわりを持つ抜群のセンスを持つシェフやチームは確かにいくつかありました。
でも、ここジョホールで、高価格帯のコース料理を提供し続けていくには、お客が継続して増えるまでの期間と、スタッフの人件費維持のため、相当な忍耐と資金力が必要です。
少量ずつたくさんの種類の料理をコースで楽しむという食事文化がまだ根付いていないことに要因があるでしょうか。
また、マレーシアの投資家は、投資した後の資金回収を急ぐ傾向があるからでしょうか。
今年に入ってからも、ファインダイニングといわれる店の閉店が相次ぎました。
タピオカドリンク大流行中の昨今は、新しくオープンするのは、マネーゲームかと思われるタピオカ店ばかり、、、。
そんな中、うれしいニュースが。
数々のミシュランレストランで修行をしたジョホール出身のシェフ、Koh Chin Hong氏が、日本人が多く住むモレック地区でレストランをオープンしたとのこと。
ヨーロピアンヒュージョンコース料理レストランです。
Koh氏は若干27歳!期待の新星です。
マレーシアでは、こころざしが強ければ、親や周りのサポートで若くして店を持つことがよくあります。
情熱やタイミングが重要なんですね。
経歴がすごい。
子供のころから料理に親しんでいて、14歳ですでに将来の目標はシェフになることだったとか。
懐石料理に魅力を感じていたことから、高校卒業後、18歳で日本に。
語学を学んだ後に服部栄養専門学校で料理の技術を勉強しました。
外国人専用のコースがあると思いきや、生徒はほとんどが日本人だそう。
マレーシア人は1人だけだったそうです。
その後、リッツカールトン東京のフレンチレストランと日本料理レストランで修行し、約4年後にシンガポールへ。
ミシュランレストランのジョエルロブションで働き、ニュージーランドへ。
ニュージーランドでは、王室所有のリゾートや、世界一のゴルフコースがあるリゾートのレストランで約3年働き、デンマークへ。
デンマークでは、コペンハーゲンの名店「ノーマ」で働く。
ノーマは、ミシュランの常連で、レストラン誌の「世界のベストレストラン50」において、2010年から4回も世界1位を受賞している、まさに世界1の名店です!
こんなトップレストランばかりにどうしたら勤務できるのかと思いましたが、情熱や経験、技術力が認められたからこそ。
そして長い海外生活を経て、ジョホールバルに戻り、自分のレストランを開きました!
お店はモレックのショップロットにあります。
「初 Initial」は、Beginning(はじまり)、最初のフレッシュな気持ち、最初のパッション、初心をテーマに名付けたそうです。
店内は、シンプルで、温かみのあるライティング。
木のダイニングテーブルが、心地よい家のリビングに来たような気になります。
はじめてここに来るお客さんが注文するには、RM198のテイスティングコースがおすすめ。
シェフ渾身の料理が詰まっています。
事前の予約により、お客の要望をふまえて、前菜2品、メイン2品、デザート2品、の6品が登場。
今回、いろいろなメニューを楽しんだので、ご紹介します。
まず最初に、昆布入りの自家製バターと自家製パン
前菜
海老のお皿
海老の頭は、カリッカリで軽く、まるごといただけます。
中に繊細でまろやかなカレー味のピューレ。
身はほどよく火がいれられ、さっぱりとしたライムのドレッシングとトマトのサルサ。
炭のチュイールがアクセント。
大根のお皿
柔らかな大根に、エリンギや四角豆、油揚げなどがちりばめられ、乾燥させたエノキをトッピング。
味噌ダシソースをかけていただきます。
卵のお皿
パイナップルを餌に育てられたチキンと野菜に、温泉卵。
玄米茶ダシを絡めて。
メイン
豚バラのお皿
やわらかな豚バラにかかっているのは、七味入りで和風味のタピオカ入りソース。
キャベツピューレとクリスピーベーコン、唐辛子のソースでマリネしたパイナップルとともにいただくとまた味わいが変わります。
白菜の中には豚バラのフィリング。
ポークリブのお皿
骨付きの大きなポークリブの角煮仕立て。
3時間火入れをしています。
ナスの醤油味のマリネとともにいただくとジューシー。
タロイモのソースとタロイモのカリカリチップスと唐辛子との相性が抜群。
牛のお皿
しっとりした牛肉に、わさびヨーグルトピューレとカリカリのクランブル。
じゃがいものミルフィーユも繊細な味わい。
魚のお皿
今日のおすすめの魚はシーバス。
やわらかで旨味のある身に、サフランバターソースが絶品。
メインディッシュのお肉やお魚はしっかりボリュームがあって満足度が高いです。
デザート
アラスカ
伝統的な昔からあるデザート、「アラスカ」。
アイスクリームの周りに甘いメレンゲ、火をつけたリキュールをかけるデザートですが、ここでは軽くさっぱりとさわやか。
パイナップルソルベが中に入っています。
ココナツムースとマンゴーミントアイス
やさしい甘さのココナツムースに、パッションフルーツの層。
自家製のマンゴーミントアイスとともに。
チョコレートオレンジケーキ
フレンチサブレの上はココアシフォン。
チョコレートソースとダークチョコレートチュイルが、オレンジとの組み合わせ抜群。
お料理全体の感想として、見た目の美しさだけでなく、素材の良さが活きる、繊細でやさしい味わい、パーフェクトな火の入れ方が特徴だと思いました。
デザートはパリで学んだパティスリーシェフが考案しています。
フランス菓子の技法をしっかり守りながら、アジア人に好まれる、控えめな甘さで全体をまとめています。
お料理には、日本の素材がいくつも取り入れられています。
せっかく腕のあるマレーシア人シェフなのだから、マレーシアヒュージョンの料理を食べてみたいなと思い、聞いてみたところ、ジョホールではまだまだお客さんが「輸入素材信仰」があるので、地元素材を軽視するとのこと。
このあたりの理想と現実のギャップを埋めるのがなかなか難しいと感じました。
クアラルンプールでは、すでに「アジアベストレストラン50」に選出されたレストランなどは、マレーシア素材でマレーシア料理ヒュージョンをかなり取り入れていて、それが受け入れられています。
ですがジョホールでは、白菜とか、パプリカとか、大衆レストランでよく使用されている素材を高級レストランで使うだけで、クレームがいくつも来るそうです。
これは数年前に別のイタリアンレストランでも同じことを聞きました。
高級レストランだから安い素材を使うのは許せない、というお客がたくさんいる現状のようです。
ですが、シェフKohの信念は、「ベストな材料はベストな料理を作る。取り立ての新鮮なローカル素材はどこよりもベスト。」
農場や市場を回って、常にベストな状態の素材を探し、仕入れています。
魚も海でとれたての生魚にこだわっています。
10月からは、おまかせコースもスタートするとのこと。
プライベートパーティ-の予約も随時受け付けているそうです。
事前に予約して、好みや要望を伝えれば、すばらしい料理を用意してくれるでしょう。
これまではディナータイムの営業のみでしたが、今日から、午後1時から5時の間、ティータイムの営業がはじまりました。
完璧に美しいフランス焼き菓子とコーヒーや紅茶がリラックスできる環境でいただけますよ。
焼きあがったばかりのアップルタルトも試食させていただきましたが、絶品でした。
数々のミシュランレストランの味を継承した、ジョホールの期待の新星、シェフKoh氏の味を、ぜひお楽しみください。
ハウスワインはRM28から、ボトルもRM128からあります。
持ち込み料RM50の支払いで、ワインの持ち込みも可。
暖かく応援していきたいと思います。
そして末永く続くことを願って。
初 INITIAL
No9-G Jalan Mokek 3/20 Taman Molek, 81100 Johor Bahru
TEL 016-247-0977
Opening Hours
13:00-17:00 (ティータイム)
18:00-23:00 (ディナー)
定休日: 月曜
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