クアラルンプール、ときどき東京。
クアラルンプール、ときどき東京。
2015/08/13

旅人にはメシを食わせよ。

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(photo by Yoshi)

四国には、お遍路さんを大切にする文化があります。
その昔はお遍路さんを自宅に泊めたり、食事を振る舞ったりすることもあったそうです。

徳島で生まれ育ったデイジー母も例外ではなく、客人にはやたらとご馳走を食べさせたがります。
そんな母の影響なのか、デイジーも旅人に出会うと「何か食べさせなくちゃ!」と反射的に思ってしまうタイプです。
 

その旅人が再びクアラルンプールにやってくると知ったとき、すぐにメールをしました。
「よかったら、ぜひお立ち寄りください! ランチでも食べましょう!」と。

デイジー、こう見えて会ったこともない人に自分から積極的にコンタクトをとることは、実はあんまりありません(仕事の場合は除きます)。
意外と人見知りなので(ちょっとウソ)、コンタクトをいただいてお会いするパターンがほとんどです(これはホント)。
でもその旅人には、ぜひとも会ってみたかったのです。

 
旅人の名は、坂爪圭吾さん
ネット界隈ではとってもとっても有名な人。
彼の文章を一度は読んだことがあるという人は、結構多いんじゃないかな。
だけど、彼とはリンクしない別次元で生きている人たちにとっては、まったく知らない人かも……。

坂爪さんは、家を持たない暮らしをしていて、日本のみならず世界のあちこちを移動しながら、日々のできごとや思いをTwitterやブログにつづっています。
余計な飾りのない彼の言葉のひとつひとつが、一々ものごとの核心をついていると感じているのはデイジーだけではないでしょう。
その証拠に、ネット越しに何万人という人が、彼の一挙手一投足を見つめているのです。
仕事や人間関係や土地や家……あらゆるしがらみから自由な、本当の自由を知っている彼に、ときに嫉妬も混じった羨望のまなざしを投げかけているのです。

PT(パーマネントトラベラー)に憧れるデイジーも、もちろんそのひとり!
シンプルなのに言霊(ことだま)を宿した言葉を紡ぐ人だなあ、若い人に随分おもしろい人が出てきたなあと、日々ワクワクしながらその更新を楽しみにしています。
 

ありがたいことにご本人から丁寧なお返事をいただきまして、ついに先週末、坂爪さんがわが家へとやってきました。
ネットでお顔を拝見していたせいかな、普段から彼の文章を読んでいるせいかな。
初めて会った気が全然しなくて、気づいたら随分たくさん話をしてしまいました。
本当はもっといろいろお話をうかがいたかったのだけれど、昼間から調子にのってワインなぞ飲んだために、デイジーとごまたろうのほうが話してしまったかもしれない……と軽く後悔。
(ちなみに坂爪さんは執筆活動中のため、シラフでした)

 
くっきりとした目鼻立ちをした坂爪さんの印象は、明るく礼儀正しい普通の若者。
でも、なんでしょうね。
彼のまわりを静かな、とても静謐な空気が包んでいる、そんな感じがしました。

なんでも映す鏡のような、うるおった大きな瞳に見えているものはなんだろう。
ある人にとっては、なんでも見透かす怖い人と感じるかもしれない。
かくいうデイジーも、ひょっとすると普段は隠してるなにか(そんなものあるのか自分でも不明だけど!!)を見抜かれてしまうのでは!? と、会う前に一瞬だけビビったことは白状します、ハイ。

でも、カッコつけたところで所詮デイジーはデイジーで。
これ以上でもなくこれ以下でもなく。

そもそもうちの息子らを見たら(´Д`)、たとえ何かを取り繕ったところですぐにバレるし(子どもはいきなりお行儀よくなんてできないし、本当に残酷なほど正直な生きものです!)、普段つくったこともないようなおいしいものなんて、突然つくれるようになるわけもないし(笑)
かくしていつものデイジーで、わが家の定番料理を振る舞いました。(パスタはごまたろう作)

 
オンオフのスイッチをもたない人と話すと、なんとラクなのだろうと思います。
年齢って、そういう人たちの前ではまったく関係がないのだなあと、つくづく思いました。
(実際には、坂爪さんはデイジーよりものすごく年下なのだけれど! ごまたろうなんて彼のお父さんの年代かも!?)

あまり深く考えもせずに「日本語は敬語があるから、人によってスイッチを切り替える場面がどうしてもできてしまって、その分めんどくさいのかもねえ」というような発言をしたら、坂爪さんに「どういう気持ちで言葉にするかなんだと思います」と言われてハッとしました。
確かに人によって態度が変わってしまうことを敬語のせいにしたら、日本語に対して申し訳ないなと思った次第です。

生きていると、いろんな人に会います。
たとえば、会うと温和ですごく人当たりがいいんだけど、Twitterなど匿名になるとやたらと毒づく人も。
そういう人は、その笑顔の下に一体どんな感情を隠してるんだろう、わかりにくいなあって思うことも。

でも、人や場面によってスイッチを切り替える生き方で、きっといちばんしんどい思いをしているのは、ほかならぬその本人なんですよね。
そういう意味では、デイジーも割とスイッチがないタイプ(正確にはあるんだけど、壊れててあまり作動しない!?)なのは、それはそれで幸せなことなのかもしれないなあと。

けれど、坂爪さんの場合は、完全にスイッチがない、ニュートラルな人だなあと思ったのです。
そして、その場を取り繕うことを知らない、とても正直な人。
だって、たとえば所持金(=全財産)数千円とか、デイジーがその立場だったら、さすがに言えないですもん。
大人だから……というより、「こう見られたい」という自分の中の変なプライドにすがってるんだろうな、そういうときは(笑)。

坂爪さんの生き方は、ある面では見習いたいと思うけれど、とてつもなく恐ろしくも思うのです。
だってちょっと話す間に、壊れかけのスイッチや虚栄心を捨てられずにいる自分に気づいたりしちゃうわけですから!
(あー、煩悩に支配されてる私、まだまだ修行が足りないわw)

 
そんな坂爪さんに、長男たろう(6歳)がとてもおもしろい反応をしていました。
「お兄さんはおうちがないって本当?」
それに対して「そうなんだよ、お兄さんはおうちがないんだよ」と、坂爪さん。

しばらくすると、「ねえ、お兄さんはどうしておうちがないの?」とたろう。
そして、「お兄さんには、お父さんとお母さんがいないの?」とも。
坂爪さんが、故郷の新潟というところに両親がいるということを説明すると、たろうはそれなりに納得したようでした。
 

ああ、この年齢の子どもには、家がないこと(あるいは両親がいないこと)を想像するのは、きっとものすごく怖いことなんだろうな、と。
でも、その恐怖に子どもの頃から支配されたままの大人って、案外多いかもしれないな、とも。

もしも
家のないことが、
仕事のないことが、
お金のないことが、
怖くなくなったとしたら、人はたぶんものすごく自由なのではないかと思うのです。
目の前にいる若者のように。

いい大人なんだから仕事はしたほうがいいとか、
人に迷惑をかけてはいけないとか、
結婚して家をもたなければいけないとか、

「常識的」な人は、彼のような自由人にそんなふうに言いたくなるかもしれないけど、デイジーは割と「非常識」なので(笑)、体さえ壊さなければどこまでも行けるところまで行ったらいいと思うのです。
そして、しがらみが多すぎる普通の人だったらとてもじゃないけど到達できないところまで行って、その目に映る景色をみんなに見せてほしいなあと勝手に期待するのです(笑)。

これはまた別の機会に書こうと思うのですが、たとえばクラウドファウンディングでお金を集めて旅をするとか、でもその見返りに報告会をするとか、お金がなくてもまわっていく経済とか、これまでの常識では計り知れないことが今、若い人を中心に確実に生まれていて、デイジーはそのことにものすごく注目しています。
相変わらず資本主義経済にぶら下がりつづけながらも、特にお金に対する世の中の価値観ががらりと変わってしまう可能性があることに、かなりワクワクしているのです。

 
ちなみに今回、坂爪さんと同行していた女性も、わが家に来てくれました。
なんとこの方、今回の旅にかかる費用すべて(航空券、ホテル代、食費など)を坂爪さんの分も負担しているのだとか!!

とってもナチュラルでチャーミングな人だったのですが、(大変申し訳ないけれど)取り立てて裕福そうにも見えません。
デイジー、失礼を承知で、なぜそういう心境にいたってそれを実行したのか、あれこれ尋ねまくってしまったのですが、考えてみれば異国で見知らぬ旅人にランチを提供しているデイジーと彼女、実は立場が寸分も違わないんですよね(笑)。
(もちろんかかる費用はまったく異なりますが!)

最終的には「坂爪さんって、ついゴハンを食べさせたくなる人なのよねえ」というところで意見が一致(笑)。
おなかが空いてる子を見かけたら「ゴハンを食べさせなくちゃ!」と咄嗟に思うのは、女に刷り込まれた本能のようなものなのかもしれません。

自由に飛び回っている旅人(男女どっちでもいいんだけど)が、旅に疲れてときどき羽を休めたくなったとき、温かい食事と寝床を提供する“港の女的生き方”は、案外悪くないのではと、「非常識」なデイジーは思っています。
突き詰めると、それは「いい男はみんなでシェアをする」ってことなんだと思うんだけど(そこに必ずしもセックスが絡むとは限りません)、それはたぶん理にかなっている……なーんて言ったら、世の中の「常識人」はやっぱり怒るだろうなあ……。
(乱婚制に対する「感情」の部分を抜きにすると、デイジーは霊長類である人間の一夫一妻制は動物学的にはかなりムリがあり、実は乱婚制が向いているのではと思っているクチです。ちなみにそうなった場合、女と子どもだけで共同体をつくり、複数の大人で複数の子どもを育てるのがよいかと)
 

とまあ、楽しい時間は瞬く間に過ぎて行きました。
今はもうとっくにクアラルンプールを後にして、次なる目的地へと旅立っていった坂爪さん。
それは未来のわが息子たちの姿なのかもしれないと思うと、その身を案じつつも、母心としては旅の幸運と成果を願うばかりです。

不思議と、彼とはきっと再びどこかで会えるだろうなって気がしているんですよね。
そしたらまたゴハンを食べさせよう。
勝手にそう思っているデイジーなのです。

 
人生は続く。
彼の旅も、彼女の旅も、私の旅も、あなたの旅も続く。

ああ、人生って悪くない!
ホントそう思いませんか?

 

デイジー
text by デイジー

神奈川県生まれ。編集者、プロデューサー、ディレクター。2012年、家族でマレーシアに移住。2015年、HIBANA LAB Sdn. Bhd. を設立。クアラルンプール市内のBangsarにアトリエ「HIABANA LAB」を構え、ワークショップやイベントなど、さまざまな企てを試み中。


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